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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(あ)1521号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人表権七の上告趣意第一点について。

所論は、原判決は、刑訴一〇二条二項及び一〇七条の解釈を誤ってこれを適用した違法があると主張するものであり、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお所論について考えてみるに、刑訴法所定の差押令状又は捜索令状における押収又は捜索すべき場所の表示は、合理的に解釈してその場所を特定し得る程度に記載することを必要とするとともに、その程度の記載があれば足りると解するを相当とする。本件について、記録により押収にかかる捜索差押許可状(証第二号)の内容をみると、被疑者の氏名として「不詳、年令三十才位の女」と、捜索すべき場所身体又は物として「京都市下京区三の宮通り七条上る下三の宮町二九二、通称大家こと矢尾秀之助方家屋内並附属建物全般」と記載してあることは所論のとおりである。しかし記録によって調べてみると矢尾秀之助は被告人の実母金谷かよの内縁の夫であって、秀之助夫婦は二階に、被告人夫婦は階下に居住し、いわゆる同居の関係にあったこと、及び大家というのは、右矢尾秀之助の俗称であって、前記場所によって大家こと矢尾秀之助家屋といえば、本件令状記載の家屋を指すこと明らかである。

従って被告人が本件家屋の世帯主であり、仮りに所論矢尾秀之助夫婦が、本件の捜索差押の日から一ケ月前に他に転居していたとしても、本件令状記載の差押又は捜索すべき場所は特定していると認めるのを相当とする。従って所論刑訴法違反の主張も理由がない。

同第二点について。

所論は、事実誤認、法令違反及び量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお記録によって調べてみても所論を是認することはできない。)

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 本村善太郎 裁判官 垂水克己)

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